特集:02/03 第51回 ジャンプ週間
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更新:ビショッフスホーフェン結果
ドイツとオーストリアのまったくプロフィールの異なる4つのジャンプ台で年末年始に繰り広げられる伝統ある大会、ジャンプ週間。独語ではVier Schanzen Tournee(For Hills Tournament)と呼ばれる。97/98までスポンサーだったインタースポーツが撤退し、"Intersports "という冠が取れた。しかし『ジャンプ週間』という日本語のネーミングはなかなかいいのでは...?

昨シーズンの記念すべき第50回大会はハナヴァルトの4戦全勝という史上初の快挙で飾られた。夏に膝を手術して今シーズン出遅れていたハナヴァルトは、ジャンプ週間を1週間後に控えたエンゲルベルク(12/22)で優勝。今回も優勝候補の1人に挙がっている。
若手、ベテランを交えてチーム全体の調子がいいAUT、エンゲルベルクでやっと1勝をあげたアホネン(12/21)、コヨンコスキ新コーチのもと士気が上がっているペターセンらNOR勢、そしてエンゲルベルクで5位になった船木選手にも注目したい。ペテルカ、ハニー、船木と来ると97/98シーズンを何となく思い出す。

今シーズンの賭けは難しいでしょうね。去年はマリシュかそれ以外という賭けで、マリシュが総合優勝する。で何勝するかという賭けもされていたらしい。今年はAUTの若手が1回ぐらい勝つかもしれないし、総合優勝は、4年前のアホネンのように1勝もしないで勝つというのもあるかも。なんと言っても8戦して6人の優勝者ですからね。

試合は96/97シーズンから導入されたK.O.システムで行われる。まず前日の予選で選手は50人に絞られる。この50人が、予選の1位と50位、2位と49位...25位と26位というふうに対戦し(対戦は25位対26位から始まる)、点数が上の選手が勝ち残る。勝った25人、そして負けた選手の中から上位5人はラッキールーザーと呼ばれ(敗者復活)、決勝に進める。決勝では1本目の得点の逆順でスタートする。

賞金:70,000Sfr.(スイスフラン)が以下のように分配される。(1Sfr.=約87円 0を2つ足して9をかける感じ)
1位30,000Sfr. 2位15,000万Sfr. 3位10,000Sfr. 4位6,000Sfr. 5位3,000Sfr. 6位2,000Sfr. 7位1,000Sfr. 8位1,000Sfr. 9位1,000Sfr. 10位1,000Sfr. 
総合優勝者は副賞としてAudi Quattroがもらえる。7位以下って同額なんだ...。

参加国: 24カ国が参加の予定。 参加は過去、および現行シーズンにWCおよびCOCでポイントを取った選手に制限される。これはナショナルグループにもあてはまる。
〈エントリー〉
AUT:ヘルヴァルト、ヴィドヘルツル、ゴルトベルガー、コフラー、コッホ、ハーフェレ、モーゲンシュテルン。モーゲンシュテルンはリベレッツのCOCで2連勝した選手。
FIN:アホネン、J.ハウタマキ、M.ハウタマキ、ラッピ、ユッシライネン、リンドシュトローム、キウル、コッコネン。予想通り?!
GER:ハナヴァルト、シュミット、ドゥフナー、ホッケ、リッツァーフェルト、ウアマン、ヘル、シュペート、ノイマイヤー、クラウスマン、バーダー、エルゼ、ルードヴィッヒ、ピーパー、アウデンリート、ムジオール。開催国ドイツは10人のナショナルグループの参加が許されている。ガルミッシュが終わったら、インスブルック、ビショッフスホーフェンに出る8人が選ばれる。
JPN:船木和善、葛西紀明、宮平秀治、山田大起、吉岡和也(12/23現在)
NOR:ロメレン、ペターセン、ハンセン、ブリストール、バーダル、インゲブリックセン、ステンスルード、ヨケルソイ。今、強いノルウェーは8人選手を出せる。
USA:アルボーン、ジョーンズ、シュヴァール。アルボーンは膝の怪我後、初参戦。

ジャンプ台プロフィールおよび結果
OBERSTDORF ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ 
第1戦:02.12.29. オーバーシュトドルフ(GER)シャッテンベルクシャンツェ
K点: 115 m ジュリーディスタンス: 123 m
シャンツェレコード: 133 .0m シュミット 00.12.29.
特徴:午後の早いうちは強い追い風が吹くことがある。助走路は急で踏み切り台が短くてむずかしい台。
スケジュール(時間は現地時間。日本時間は+8時間)
12月28日(土)11:30 トレーニング 13:45 予選
12月29日(日)12:00 試技     13:45 1stラウンド  14:45 決勝ラウンド

予選:ヨケルソイ(NOR)トップ。ハナヴァルトは予選をパス。
ハナヴァルトはジャンプ週間を前に予選免除圏内に入って去年と同様に予選をパスできる状況になったことで精神的にかなり楽になったでしょう。シュミットの3位はいよいよ来たか、という感じ?ヴィドヘルツルは26位で1組目。ヘルヴァルト12位、マリシュ16位、ゴルディは5位でのドゥフナーとベテラン対決。おもしろいのは(?)なんとマッティ(15位)とユッシ(35位)の兄弟対決が見られること。注目です。
本戦の組み合わせ:1.ヨケルソイ-50.ハナヴァルト 2.アホネン-49.リーグル 3.シュミット-48.コッコネン 4.葛西-47.タイナー 5.ゴルトベルガー-46.ドゥフナー 7.宮平-44.マトゥラ 8.船木-43.ハンセン 15.M.ハウタマキ-36.J.ハウタマキ 16.マリシュ-35.バーダル 18.ペターセン-33.バハレダ
結果:ハナヴァルト優勝
1.ハナヴァルト125.5+119.0m/263.1点 2.ヘルヴァルト112.5+119.0m/257.7点 3.アホネン124.0+118.5m/257.5点 4.シュミット121.0+118.5m/252.5点 5.コフラー117.0+120.0m/245.1点 6.ヨケルソイ117.0+120.0m/243.6点 16.宮平113.0+116.0m/230.2点 21.葛西112.5+113.0m/244.4点 23.船木113.0+111.0m/222.7点

シュミットは成績的には復活。本人も予想外の好結果にはビックリ。テレマークもきれいにきまったし。でもマテリアルもまだ今イチだし、とくに筋力的にまだまだ本調子とはほど遠い。ただ技術的にうまくいったので結果につながったというところらしい。ハナヴァルトは前日のインタビューでもとてもリラックスしていて全然心配していなかった。でもまさか優勝するとは...。すごいです、5連勝。

GARMISCH-PARTENKIRCHEN ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
第2戦:03.01.01. ガルミッシュ-パルテンキルヒェン(GER)オリンピックシャンツェ
K点: 115 m ジュリーディスタンス: 121 m
シャンツェレコード: 129.5 m マリシュ 01.1.1.
特徴:技術的に多くを要求される台。向かい風であることは珍しく、上昇気流もほとんどない。助走中はいいのか悪いのかわからず、距離を聞いてやっとわかる。
スケジュール(時間は現地時間。日本時間は+8時間)
12月31日(火)11:30 トレーニング 13:45 予選
予選:AUTの新星モーゲンシュテルン、トップ。
ハナヴァルト、マリシュは棄権。
本戦の組み合わせ:1.モーゲンシュテルン-50.ハナヴァルト 2.コッホ-49.マリシュ 3.アホネン-48.船木 21.シュミット-30.ヘルヴァルト 18.宮平-33.コフラー 17.葛西-34.ステンスルード 15.ゴルトベルガー-36.山田
1月1日  (水)
12:00 試技     13:45 1stラウンド  14:45 決勝ラウンド
結果:優勝候補、相次いで転倒。ペテルカ優勝。
1.ペテルカ123.5+123.5m/264.6点 2.マリシュ121.0+123.5m/261.1点 2.ゴルトベルガー121.5+123.0m/261.1点 4.ヨケルソイ122.0+1228.5m/256.1点 5.アホネン123.0+129.0m/255.6点 7.宮平117.5+118.0m/245.9点 10.ヘルヴァルト121.0+114.5m/236.9点 12.ハナヴァルト118.0+124m/235.1点 33.シュミット111.5m/109.7点 22.葛西115.0+115.0m/241.5点 37.船木106.5/99.2点 47.山田97m/79.6点

優勝候補の転倒が続く中、変わりやすい風をうまくこなしたペテルカが優勝した。マリシュとゴルディの2人が同点2位。1本目、ヘルヴァルトが転倒。2本目まずはハナヴァルトが124mで転倒。そしてアホネンは129mとシャンツェレコードまであと50cmのジャンプで転倒するも5位。予選トップでハナヴァルトと対戦したAUTのモーゲンシュテルンは25位。踏み切りにまだ問題があるというシュミットは追い風もあって33位と2本目に進めなかった。

INNSBRUCK ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

第3戦:03.01.04. インスブルック(AUT) ベルクイーゼル-シャンツェ
K点: 120 m ジュリーディスタンス: 134 m
シャンツェレコード: 134.5 m ハナヴァルト 02.1.4. 
特徴:風の状況は変わりやすい。向かい風を得れば距離を出せる台。スタートからインスブルックの街と墓地が見える。「踏み切り台は短く、着地面のRがきつくてブレーキングトラックはいつも凍ってる」とトーマに言わしめたこの台も01年K120に改修され、ブレーキングゾーンも作り替えられた。
スケジュール(時間は現地時間。日本時間は+8時間)
1月3日(金)11:30 トレーニング 13:45 予選
1月4日(土)12:00 試技     13:45 1stラウンド   14:45 決勝ラウンド
結果:アホネン、満を持して優勝。
1.アホネン122.0+115.5m/227.5点 2.リーグル121.5+112.5m/218.7点 3.ヘルヴァルト118.5+113.5m/215.7点 4.ハナヴァルト114.0+117.5m/215.7点 5.ヴィドヘルツル118.5+112.0m/214.4点 9.シュミット114.0+114.0m/206.9点 11.宮平115.0+110.0m/204.5点 13.葛西115.0+115.0m/241.5点 49.船木99.5/69.6点 

ハナヴァルト:「1本目、リラックスして飛べなかった」2本目は13位から4位へジャンプアップ。きょう、ハニーと対戦したAUTの新人はシュテファン・トゥルンビヒラー(111.5+104.5m/184.8点/22位)。宮様に来ていたのはつい昨日のことのようだけど、もう3年前。19歳か...ずいぶん顔つきが大人っぽくなりました...私の中ではいつまでも16歳の少年のままだけど...。
そして身長194cmの(去年はたしか192cmだった。まだ伸びてるの?)フローリアン・リーグル。2位だって、ビックリ!!彼も宮様組(それも2回)。板の上限の規定がなくなったのは関係ない?とにかくAUTは11人も2本目に進んでいる。次は誰?

ジャンプ週間総合ではアホネンが2位に26.7点差をつけて1位をひた走っている(740.6点)。距離にして15m。最終戦で2本目に進めない、なんていうことでもない限り(これがなくもないんだけど)おそらく4年ぶりの優勝を果たすのでしょう。
2.ハナヴァルト 713.9点 3.ヘルヴァルト 711.2点 4.ヨケルソイ 710.3点 5.マリシュ 706.7点 
NORはペターセンの活躍を誰もが予想したでしょうがヨケルソイでした。日本人トップは宮平クンの10位(680.6点)です。

BISCHOFSHOFEN ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
第4戦:03.01.06. ビショッフスホーフェン(AUT) パウル-アウサーライトナー-シャンツェ
K点: 120 m ジュリーディスタンス: 135 m
シャンツェレコード: 139 .0m ハナヴァルト 02.1.6.
特徴:すばらしい向かい風であることもある。大変危険な横風が吹くことも。ハナヴァルト:「永遠に助走が続くんじゃないかと思える。ず〜っとクラウチングしていて、速さの感覚がなくなる、シャンツェが広いから。そうすると踏み切り台が来て、踏み切らなくっちゃならない。まだ何にも見えないのに」
スケジュール(時間は現地時間。日本時間は+8時間)
1月5日(日)11:30 トレーニング 13:45 予選
予選:5日の予選は中止。
最初、みんな130mジャンプを連発した。予選前、雪を入れて整備し助走路を短くすると、今度は短すぎ。88km/hしかスピードが出ない。その後、4つもゲートを上げてスタートすると若い番号の選手が上昇気流に乗ってシャンツェレコード近くまで飛び、その上、助走スピードに3km/hも差がある。それで中止と相成った。
ハナヴァルトは中止が決定する前にホテルへ。この台にはいい思い出しかない。しかしアホネンも得意なはず。去年を除いていい成績を挙げている。
予選は6日11:30から試技に代えて行われる。今回、試合はK.O.システムでは行われない。K.O.システムの場合、予選は前日に行われなければならない、というルールがあるからだ。だからハニーが予選をパスして50番で飛ぶことはもうない。
1月6日(月)12:00 試技11:30予選
  13:45 1stラウンド   14:45 決勝ラウンド
予選:トップはモーゲンシュテルン
予選でもジュリーは苦労していた。2度、ゲートは変更された。2度目の変更後もあやしかった。が今回はK.O.システムではないので全員同じゲートで飛ぶ必要はない。予選免除のベスト15は2つ下のゲートから飛んだ。
ハナヴァルトは132.5m、アホネン126.5m。上のゲートからとはいえモーゲンシュテルンは135mを飛んでトップ。宮平、葛西、船木は無事予選通過した。

結果:ロメレンWC初優勝。アホネン、2度目のジャンプ週間総合優勝。
1.
ロメレン126.5+130.5m/263.1点 2.コフラー
125.5+130.0m/262.4点 2.ハナヴァルト128.5+127.0m/262.4点 4.アホネン130.0+123.5m/253.0点 5.ペターセン134.5+123.5m/257.0点 9.シュミット121.5+116.0m/225.0点 19.宮平119.5+119.0m/228.3点 38.船木110.0m/94.5点 39.葛西107.5m/91.0点
 
アホネンが悪条件にもかかわらず2本目とも確実なジャンプをしてこの日4位。ハナヴァルトに23.6点差で総合優勝を果たした。ジャンプ週間で2回優勝したのはフィンランド人ではカンコネン、ニッカネンに次いで3人目。
アホネンのコメント:「ジャンプ週間は勝つために参戦した。コンスタントに成績が出せれば、優勝できるとわかっていた。うまくいってうれしい」ジャンプ週間総合2位はハナヴァルト(976.3点)、3位マリシュ(959.7点)。それにしてもいつもアホネンのスキーは走っている。きょうもほかの選手より1km速かった...。アホネンはこれでWC総合でもトップに躍り出た。

優勝はまたも意外なノルウェー人のロメレン。「ホントにジャンパー?!」とよく言われているコだ。いっつも何となく斜に構えている。やる気あるの?というタイプ。でも優勝の笑顔は素直な本物の笑顔だった。アレがきっと”素”なのね。

テストジャンパー、トーマス・トゥルンビヒラー:若干13歳。2度飛びという裏技(1度着地してそこでもう1回踏み切って飛ぶ。しかもV字)をやってのけた。シュテファンの弟。兄弟で全然性格がちがいそうだ...。

今回はハナヴァルトの4連覇という前回とまるで違ったジャンプ週間でした。まぁ、予想通りでしたが。