2010/2011 NORDIC COMBINED


札幌でWCが開催されなくなって4季が過ぎた。日程のブランクは埋まらないままシーズンが始まる。全部で13戦。これはピーク時の半分。09/10は20戦あったのに。まずオスロがWMでWCは開催されないのと、オーバーホフ、ヴァルディフィエンメ(隔年開催?)が減った。今、世界的にコンバインドの試合開催は難色を示されている。札幌はジャンプ台とクロカン場が離れているという問題があるけど(それがWCを開催できない理由ではない)、飛んだらすぐに走れるようなところであっても、ジャンプ台とクロカンコースの両方を整備するのは大変だからだろう、人手も、温暖化の昨今は雪=金銭的にも。2011/2012はヴァルディフィエンメやクリンゲンタールが戻ってくるのに加えて、開催地を増やすのではなく、同一会場で試合数が増える(ゼーフェルトとシェヌーヴで3戦ずつ)。元純ジャンパーのラッセ・オッテセンがコーディネーターに就任し、今後は純ジャンプとクロカンとの連携を強めるらしい。確かにどちらかと一緒にやれば、リーゾナブル。そろそろ札幌でも復活したらいいのに...。
ジェイソン・ラミィシャプイ(FRA):WC総合二連勝。4勝。WM:個人NH 15位、個人LH 金、団体NH 5位、団体LH 4位。WMでスペシャルの団体戦に出ていたし、フランス選手権では優勝だったけど、どうか純ジャンに転向しないでね。今のコンバインドのトレンドとして、ジャンプだけが強くても成績は残せないが、ラミィシャプイは13戦のうち8戦で前半ジャンプ1位。そのうち逃げ切って勝ったのが4戦。つまり全4勝のうち、すべてで前半ジャンプ1位だった。前半でクロカンの強い選手を1分30秒以上引き離すのが必勝パターン。
ミッコ・コクスリエン(NOR):総合2位。1勝(初)。WM:個人NH 6位、個人LH 11位、団体NH 銅、団体LH 銅。モアンでもタンデでもなく(タンデは道を模索中、辞めてはいないけど)コクスリエン。クロカン型の若手。クロカンが強い選手って、ある日、ふとジャンプが飛べるようになると、結果が出始める。ジャンプ型の選手にクロカンの力がつくのには時間がかかるのに比べて。
1985年3月10日、リレハンメル生まれの26歳。お母さんはラハティ出身のフィンランド人、お父さんはノルウェー人。ファーストネームのミッコはフィンランドの名前。3人兄弟の長男で、9歳でNCで世界一になりたいと決意。でも昔からジャンプはちょっと苦手。
フェリックス・ゴットヴァルト(AUT):総合3位。2勝。WM:個人NH 銅、個人LH 21位、団体NH 金、団体LH 金。復帰2季目。開幕2戦目でナント勝つ。しかも2分差を詰めた。総合優勝もなくはない、金メダルもある、ひょっとしたら今季が最後ではないかも...と。12月14日、ジャンプ練習中に肩甲骨骨折するも、1月8日ショーナッハで優勝。そして、35歳の誕生日に、ちょうど2カ月後のラハティで現役を退くと発表。知ってたし...って知らなかったけど、だと思ってた。3年前のようにセンチメンタルになることはないと思う。もう何も言うことはないです。
マリオ・シュテヒャー(AUT):総合5位。2勝。WM:個人NH 29位、個人LH 10位、団体NH 金、団体LH 金。ラムザウで二連勝し、次のショーナッハでは2位。イエロービブで自国のWCに出場できるところだったのに、公式練習で転倒。WMに備えて欠場を決めた。WMでは個人メダルには手が届かなかったけど、団体ではもうマリオがいなければ...という。総合5位という成績はここ10年で一番いい(といっても昨年一昨年は6位)。ゼーフェルトでやった膝を手術したそうだ。経過は順調のようだ。ソチまでやるのかな?
これまでAUTはゴットヴァルトという中核がいて、大イベントの選考ではその他の誰もが当落戦上にいた。シュテヒャー、B.グルーバー、デニフル、クライナー、ビーラー。B.グルーバーは昨季勝ち、五輪で個人メダルを獲った。クライナーは今季初優勝し、デニフルは好調だった。COCでもディア、ドルムル、ピヒルマイヤー、クラプファーと4人がトップ10に入っている。そろそろこの辺がWCに入ってくると世代交代になるが。
ドイツに足りないもの:純ジャンプにジャンプ週間があるように、コンバインドにはグランプリがあった。ドイツで年始に行われていたヴァールシュタイナーグランプリ(オーバーホフ、ルーポルディング、ショーナッハ)は'08で終わり、2010/2011、ドイツでのWC開催はショーナッハ1カ所のみ。ドイツでさえ...。だから世界選手権NHでフレンツェルとエーデルマンが金、銀、LHでリドツェクとフレンツェルが銀、銅を獲ったとき、もっと注目して!!とアピールしていた。WC総合でもフレンツェルが4位、リドツェクが6位、キルヒアイゼン7位、エーデルマン9位と10位以内に4人、2勝している。そしてCOCの1位はドイツ人、リースレ。それでも国別で1位になれないのは、AUTは10位以内に3人だが5勝しているから。WMや五輪でも、団体戦でAUTに勝たないとね...。それに成績がいいだけでなく、スター性、カリスマ性のあるアイコンが必要だ。健司さん全盛期、ってことは日本経済全盛期でもあるのだけど、欧州の試合で彼が記者をゾロゾロ連れて歩いていてビックリしたとヴァインブーフコーチが言っていた。ドイツがもう一歩進むには、こういう選手が必要だと強く思ったと。アッカーマンにはその要素が備わっていたと思う。ところでアンディがいなくなっても大丈夫ですかね...。
アッカーマン引退:そのアッカーマンは08/09シーズンから休んでいたが、ついに引退を表明した。もうトップレベルではやれないとのこと。秋からはコーチになるという。アッカーマンが強かったころはドイツもイケイケだったのにね。
WC通算28勝。WM個人グンダーセンでは2003年から3大会連続で金メダル、2005年はスプリントと二冠。01/02、02/03、07/08、三度のWC総合優勝。五輪で個人メダルはないが団体では銀2つ。77年生まれ、33歳。
ハンヌ・マンニネン:総合39位。07/08引退し、09/10、復帰して3勝したものの、またも五輪金メダルを逃したからか、現役続行を発表。今季は1勝もできなかったが、4月には2足のワラジを履きつつ競技生活を続けることを表明していた。6月、一転して引退を発表。パイロットになる。
03/04、04/05、05/06、06/07と4季連続でWC総合優勝。通算48勝。WM:個人NH21位、個人LH15位、団体NH7位、団体LH DNS。

アンシは戻ってきそうにないし、残るはリューナネンただ一人でFINは大変そうだ。

スイスチーム:ロニー・ヘアが引退。トミー・シュミードがお兄ちゃん(ヤン・シュミード)の後を追って、NOR移籍を考えているらしい。いずれにしても少し休むのだという。え、スイスってあと誰がいたっけ?! スイススチーム、素朴すぎて、いいお兄ちゃんたちすぎて、訛りすぎてて、もう大好きなのに。いや、シミィは例外的にほんと話好きだし、ホッホドイチュ(標準ドイツ語)できるし、英語も上手。
日本チーム:小林範仁選手、引退。小林潤志郎選手、純ジャンプ転向。渡部暁斗選手WC総合11位。清水亜久里選手、ユニバーシアードで金メダル。NCは自国で国際試合がないのだから、出て行くしかない。COC遠征しないとなると、いきなりの国際試合が世界ジュニアだったり、ユニバーシアードだったり。COCに出してあげたい。
2011/2012 新試合方式・新ルール:
・チームスプリント:COCで試したチームスプリントがWCに採用される。1チーム2人一組で、前半ジャンプは2人の点数の平均値が得点になり、後半スタートのタイム差に。後半は1.5kmを交互に1人5周ずつ、2人で10周する。
・Penalty Race(ペナルティレース):前半ジャンプは1本のみ。飛型点なし、WF、GFなしで、飛距離のみがカウントされる。後半は通常の10kmに前半ジャンプの差が0から5、6周のペナルティになり(150m、約22〜25秒のロス)、10kmから15km走る。まったく新しい方式というけど、マススタートのジャンプとハリケーンスプリントが合わさったみたいだ。NCはGF/WFが導入されて3季目。とくに不平を耳にしたことはないが、この試合でなしでやってみようというのは、やっぱりホントはないに越したことはないんだよね...。
・予選:試合日にジャンプができなかったときにPCRの結果が使われるのは変わらず。同時に予選としても機能し、試合に出場できるのは上位50人のみ。
・オスロの最終戦:ランキングのベスト30のみが出場できる(純ジャンと同じ)。前半ジャンプは2本飛び、後半は15km走る。旧グンダーセンの復活...。アトラクション的要素が強いのか、旧ルールだったら誰が勝つか知りたいのか。あ、でもWF/GFはあると思う、ないとは書かれていない。

パフォーマンス Lahtiのスタートリストから
SJ
CC
11 ラミィシャプイ(FRA) ●●●●●●●●●● ●●●●●●●○○○
12 コクスリエン(NOR) ●●●●●●●○○○ ●●●●●●●●●●
13 ゴットヴァルト(AUT) ●●●●●●○○○○ ●●●●●●●●●●
14 フレンツェル(GER) ●●●●●●●●●○ ●●●●●●●●○○
15 シュテヒャー(AUT) ●●●●●●●●○○ ●●●●●●●●○○
16 リドツェク(GER) ●●●●●●●●○○ ●●●●●●●●○○
17 キルヒアイゼン(GER) ●●●●●●●○○○ ●●●●●●●●●○
18 シュミード(NOR) ●●●●●●●●○○ ●●●●●●●●○○
19 エーデルマン(GER) ●●●●●●●○○○ ●●●●●●●●●○
10 クライナー(AUT) ●●●●●●○○○○ ●●●●●●●●●○
11 渡部暁斗(JPN) ●●●●●●●●○○ ●●●●●●●●○○
12 モアン(NOR) ●●●●●○○○○○ ●●●●●●●●●●
13 ルンガルディア(ITA) ●●●●●●●○○○ ●●●●●●●●○○
14 クレメチェン(NOR) ●●●●●●●●●○ ●●●●●●○○○○
15 ラクロワ(FRA) ●●●●●●●●○○ ●●●●●●●●○○
16 グルーバー(AUT) ●●●●●●●●●○ ●●●●●●○○○○
17 デニフル(AUT) ●●●●●●●●●○ ●●●●●●○○○○
18 リューナネン(FIN) ●●●●●●●●●○ ●●●●●●○○○○
19 ブロウ(FRA) ●●●●●●●●●○ ●●●●●○○○○○
20 ビーラー(AUT) ●●●●●●●●●○ ●●●●●○○○○○
31 加藤大平(JPN) ●●●●●●●●○○ ●●●●●○○○○○
36 高橋大斗(JPN) ●●●●●●○○○○ ●●●●●○○○○○
38 小林範仁(JPN) ●●●●○○○○○○ ●●●●●●●●○○
42 湊佑介(JPN) ●●●●●○○○○○ ●●●●●●●○○○
53 渡部善斗(JPN) ●●●●●●●●●○ ●●●○○○○○○○
SJが10はリアン、ラミィシャプイ、CCが10はコクスリエン、ゴットヴァルト、モアン。
トップ10に限るとラミィシャプイとフレンツェルを除いて、みんなCCの方が強い。ところが20位までに広げると、俄然、ジャンプの方が得意な選手が入ってくるからおもしろい。

クロカン型選手に有利だと思われるルールであるにもかかわらず、コイヴランタ、ラミィシャプイとジャンプ型の選手が3季続けて総合優勝を果たしてきたのは、彼らが前半で最もクロスが得意な選手たちにおよそ15m=22点=約1分30秒以上の差(ざっくり言ってK点とHSの差)を付けることができれば、逃げ切れるからだ。それは後半の距離が15kmではなくて10kmになったからでもある。彼らはジャンプでぶれずに一番いいモノを出すことができた、そしてそれなりに(せめて50人中で真ん中ぐらいの)クロスの力もある。

総合14位から20位までのジャンプ型の選手たちは、ジャンプの力そのままで走れるようになれば、当然、上位入りできる、普通、クロスの力がつくとジャンプは飛べなくなると言われるが。それともクロカン型の選手の逆襲があるのか。新種目のペナルティレースがどうなるのかも注目したい。