2008/2009 NORDIC COMBINED

アンシ、マグ、ときどきデモン。

今季から試合は前半ジャンプ1本、後半距離10kmの一種類のみになった。これまでの個人グンダーセン(前半ジャンプ2本、後半距離15km)とスプリント(前半ジャンプ1本、後半距離7.5km)は1本10kmに集約。マススタート(前半距離10km、後半ジャンプ2本)は世界選手権を最後に廃止。ハリケーンスプリントやマススタートスプリントポイントといったトリッキーな試合形式もなくなった。メリットは、これまでも強風等でグンダーセンがスプリントに変わったことがあったが、ジャンプを1本しか飛ばなくてよくなり、さらにはあとで述べるプロヴィジョナルコンペティションラウンドを行うことで、悪天候でも試合が成立しやすくなったし、試合はほぼ2時間で収まるようになった。

始まりはアッカーマンだった。世界選手権、そして五輪に向けて万全なのだと思ったし、1本10kmに変わって、走飛バランスの取れた選手が強いと思ったから、彼は今季の一押しだったわけだ。ジャンプが1本になったことで前半での差が少なくなる。モアン、デモンクラスの走力ならジャンプで10m置いていかれていても10kmで追いつくことが可能。コイヴランタがHSを飛んで2人がK点ぐらいでいい勝負。その代わり、15kmなら追いつかれてしまうところを、10kmなら逃げおおせる。

試合形式が1つになったのと共に、Provisional Competition Round(以降P.C.R.と略す、日本語ではどう訳すのが適当か。予備ジャンプとでもすればいいのか)制度も導入された。前日にP.C.R.を行い、試合当日、悪天候等で飛べなければこの結果が採用される。結局、P.C.R.の結果は4試合で使われた。昨季までなら中止か、不公平な条件で、無理矢理成立させていたところだろう。開幕2戦はP.C.R.自体できなかった。クリンゲンタールでは1戦目は風が強く、P.C.R.の結果を使った。夜、翌日分のP.C.R.をやろうとしたけどできなかった。翌日、ジャンプができなければ、もう一度、金曜日の結果が使われるとアナウンスされた。結局、ジャンプは成立したけれど。

それからもう1つ、重要なことを忘れていたので追記する。今季、ジャンプの距離点が替わった。NHはこれまで通り2.0点/mだが、LHが1.2点/mから1.5点/mになった(今季のNHの試合は個人戦23戦中7戦。残りの16戦はLH)。ジャンプ得意な選手の後半スタート前のリードはジャンプが2本から1本になり減ったが、1.5点/mになったことで少し調整され、タイム差換算は15点で1分、つまり10mで1分。むしろ2本が1本に減ったと考えるより、
昨季までのスプリント、1本/7.5kmの距離が2.5km増えたと考える方が比較しやすいのか。これまでジャンプ得意な選手はスプリントの方が勝ちやすいと言われていたが、この1.2点/mが1.5点/mに、7.5kmが10kmにというのが、例えばコイヴランタにとっては絶妙な勝利へのバランスだったのかもしれない。

総合優勝、アンシ・コイヴランタ 7勝
前半
後半
順位
前半
後半
順位
2位 29位 3位 1位 20位 4位
3位 13位 1位
1位
30位 2位
2位 26位 2位
1位
15位 1位
1位 36位 1位
26位
8位 13位
24位 10位 18位
2位
15位 3位
3位 15位 4位
1位
18位 1位
1位 16位 3位
6位
5位 7位
2位 8位 1位
1位
15位 2位
1位 27位 1位
1位
24位 2位
DNF
1位 23位 1位
1位 25位 2位 4位 16位 8位
これまで表彰台には立つものの、コイヴランタが勝てそうで勝てなかったのは、ノルディックコンバインドという競技が距離偏重の傾向にあるからだと思っていた。

彼が初優勝したのは今季、開幕から2試合目。今季はさらに走りが得意な選手に有利になると予想していたので、1勝はしても、その後、トントン拍子でこんなに勝つとは、そして総合優勝までするとは意外だった。
コイヴランタが前半ジャンプでトップだったのは11戦。そのうち5戦でリードを守り抜いて試合に勝っている。前半24位だったラムザウでは18位、26位だったゼーフェルトでは13位でジャンプで上位に入れないと厳しいが、後半タイムがラムザウは10位、ゼーフェルトは8位。ジャンプの成績がいいときは、単独で走る区間が多いからかタイムが伸びないのか、余力を残しているのかもしれない。
今後、CCを強化して、SJが悪くなるのなら、今のままでいいよね、とジャンプ好きコンバインドファンは思う。

総合2位、マグヌス・モアン 7勝
前半
順位
前半
順位
44位 +4:06 25位 7位 +1:10 1位
15位 +2:54 4位 25位 +1:48 1位
20位 +1:05 1位 27位 +1:46 3位
28位 +2:00 6位 34位 +1:40 9位
43位 +3:12 16位 22位 +1:44 1位
18位 +1:42 6位 9位 +1:44 2位
7位 +0:59 1位 15位 +1:58 4位
33位 +2:36 5位 20位 +1:26 4位
30位 +1:46 11位 20位 +1:51 1位
Mass 1位 7位 24位 +1:45 3位
3位 +1:14 1位 43位 +1:44 13位
14位 +1:40 5位

モアンは諦めるのが早いんじゃないかと思うことがよくあるのだが、考えてみれば、2分差以上をず〜〜〜〜っと上がってきて、それで最後にスプリントする力なんて残ってなくても仕方ないか...。
それでもジャンプで1分半差ぐらいに収まっていれば、優勝に届く。
唯一のマススタートでは前半CCで1位だったが、勝ったのはCCで2位だったキルヒアイゼン。2位はCCで13位、SJでは1位のグルーバー。モアンはSJ15位で、最終順位は7位だった。

とにかくモアンの場合、雌雄を決めるのはジャンプのできだ。
最終戦までモアンにも総合優勝のチャンスはあった。それがジャンプでのプレッシャーにつながったのか。コイヴランタと同じ7勝なのにTOP10を外したのがコイヴランタの2回に対してモアンは4回。表彰台はコイヴランタ15回、モアン10回。うち2位はコイヴランタ5回、モアン1回。3位はコイヴランタ3回。モアン2回。その差が最終順位の差になったのだろう。

総合3位、ビル・デモン 5勝
前半
後半
順位
前半
後半
順位
39位 5位 27位
26位
6位 14位
31位 1位 13位
2位
10位 1位
21位 6位 4位
8位
4位 3位
31位 3位 7位
17位
4位 5位
2位 23位 16位
7位
2位 1位
7位 7位 6位
6位
5位 1位
22位 2位 1位
4位
14位 3位
28位 2位 5位
16位
2位 2位
18位 2位 11位
17位
2位 1位
4位* 8位 4位
*マススタート

リベレッツWMでNHで銅、LHで金メダルを獲ったデモンは、バンクーバーのプレ五輪のあと、シェヌーヴとゼーフェルトの4戦を欠場。5勝のうち3つを後半に勝っている。それもWM直前のクリンゲンタールと直後のラハティ、そして最終戦。ピーキングということでいえば、完全にWM狙いだ。20歳のコイヴランタ、24歳のモアンに対してデモンは29歳。そろそろタイトルがほしい。そして2つ金メダルを獲ったのはチームメートのロドウィックだったけれど、あんなこと--ビブ事件--があったあと金メダルを獲った。
コイヴランタはジャンプ型だけど、2位モアンと3位デモンはクロカン型。デモンはモアンよりもジャンプが安定している気がするがどうだろう。来季、地元に近いカナダでのオリンピックはUSA勢は怖い。

総合6位、シュテヒャーの1勝とオーストリア
9月にジャンプ練習中に太股内側の軟骨骨折、半月板亀裂の怪我を負ったシュテヒャーは、2カ月後にはCC練習を再開、12月にはジャンプ練習を開始し、12月20日、ラムザウでの復帰第1戦で5位。その後、4位が続き、なかなか表彰台に乗れずにいたが、ついにゼーフェルトで優勝。なんと3年振り。
総合ではマリオに続いてB.グルーバーが9位、ビーラーが13位と決して悪くはない。AUTにはジャンプ型の選手が多い。そして主要メンバーが替わっていない国の一つでもある。WMではメダルが獲れなかった。これはなんとかしなくてはね。

ネーションズカップでダントツのドイツ
ドイツは、大将、アッカーマンがインフルエンザの影響で結局は総合19位に終わったが、キルヒアイゼンが4位、エーデルマン8位、フレンツェル11位で国別で優勝。COC(旧WC-B)では総合でメンツ、ヴェルデ、ギュンターが表彰台を独占。5位と8位もドイツ人でTOP10の半数を占め、COCの国別では2位のNORのダブルスコアに近く、相変わらず層の厚さを見せた。

日本勢
走りの強い選手に重きを置いたWM団体戦のチーム編成。とくに湊選手のジャンプの調子がよかったのが大きいと思う。ジャンプさえ飛べれば行けるというのは非常に希望が持てる。
WCでは小林選手の18位が最高だったが、小林選手もいつもクロスではひと桁順位なのでジャンプが安定すれば、常にTOP10を狙える。

ロドウィックの金メダルから
トッド・ロドウィックの金メダル、しかも二冠。ジャンプやコンバインドでは食べてはいけないUSAで、1年休んで、復帰して、WMだけに目標を絞って。あると思う、そういうやり方。12個あるコンバインドのメダルのうち4つがアメリカへ行った、しかも2人で2つずつ、というのはすごい。ドイツだって3つなのに。ただ、やっぱり、ふつうにWCを戦っている選手にしてみれば、やるせない。最悪のタイミングで風邪をひいてしまったコイヴランタなんぞは。そう、総合上位2人はメダルを獲れなかった。「メダルだけを狙いに行く」ことが果たして正しいのか。もちろんメダルは賞賛には値する。正しい...? 正攻法ではない、少なくとも。それをやろうとするのが一度は総合を獲った選手だったりするから質が悪い。昔、マルティン・シュミットが「WC総合とWMのメダルとどちらが価値があるか」と聞かれて「選手経歴としては総合優勝の方が価値があるんだろうけど、でも世界選手権の金メダルというのは、なにものにも代えがたい価値があるものだから、自分の中ではどちらにも決められない」と答えていた。どちらかをあげると神様に言われたら、総合の称号をすでに持っている人は迷わずメダルを選ぶのだろう。

今後もコイヴランタとモアンが引っ張っていくんだろうが、この先のコンバインドはよりジャンプとクロスのバランスが求められるだろうと言われている。今季はジャンプ型のコイヴランタが勝ったが、それほどジャンプがよくなくても成績が出せるであろうことが窺える。

たまにはフルの試合(ジャンプ2本/15km)があったり、廃止されたマススタートも織り交ぜたほうが、おもしろいと思うけど、どうだろう。

コンチネンタルカップ=旧WC-Bとクオータ、WRL
昨季までWC-Bと呼ばれていたWCの下のカテゴリーの試合は今季からコンチネンタルカップと名称を変え、それと同時にWRL=ワールドランキングリストの作り方が替わった(これまでのはここを参照)。
クオータは最大8から7に。出場資格は個人ではなく、国にその数が与えられる。要するに限りなく純ジャンプに近い、というか、ルールはほぼ純ジャンプに準ずる、という感じになった。
そもそもWRL(という考え)は純ジャンプにはなかったが、サマーGPも加点されるようになって、WC総合、GP総合、そして2つを合わせたのがWRLになる(厳密に言えば単に合計していくのではなく、前年の同ピリオドの得点が消えていくのだが)。コンバインドではA-WCとB-WCを同じテーブルに載せて全員をランク付けしようというのがWRLだった。Aはポイントを10倍、Bは2倍して得点が多い順に並べ、上位40人がWCの出場資格を得る。資格はその順位の個人に与えられるが、変更は可能だった(人数はクオータによって替わる)。だから、ピリオド終了後には必ずWRLが必要だった。今でも純ジャンプのWRLの存在理由があまり理解できないのだが、いつも夏に点を稼いでいる日本チームにはありがたいのかもしれない。コンバインドのWRLもそれにほぼ等しくなった。これまでとの最大のちがいは、B=
コンチに出ている選手へのWC出場機会だろう。この方式になって、これまではBでがんばればWRLで40位以内に入ることは可能だったが、今季からは、一度WCに出てポイントを獲らないとWRLには載らない。その代わり、権利が記名ではないから、コーチが出そうと思えばWCに出られるのだが。どっちがいいんでしょうね。COC(WC-B)総合上位3名がWCに出られるのは替わっていない。


World Cup
Kuu
Tro
Lib
Ram
Obe
Sch
Val
Van
Cha
See
Kli
W
M
Lah
Vik
Anssi
3
1
3
1

18
4
3
1
1
2
4
2
1
13
3
1
7
2
1
1
8
Magnus
25
4
1
6
16
6
1
5
11
7
1
5
1
1
3
9
1
2
4
4
1
3
13
Demong
27
13
4
7
1
2
5
8
2
4
14
1
3
5
1
1
3
2
1
その他の優勝者
A
K
K
S
A=Ackermann, K=Kircheisen, S=Stecher

世界選手権
Mass
ロドウィック(USA)
エーデルマン(GER)
ラミィシャプイ(FRA)
NH
ロドウィック(USA)
シュミード(NOR)
デモン(USA)
Team
日本
ドイツ
ノルウェイ
LH
デモン(USA)
キルヒアイゼン(GER)
ラミィシャプイ(FRA)

ここ10年のWC総合優勝者と年齢
08/09
コイヴランタ(20歳)
03/04
マンニネン(26歳)
07/08
アッカーマン(30歳)
02/03
アッカーマン(26歳)
06/07
マンニネン(29歳)
01/02
アッカーマン(25歳)
05/06
マンニネン(28歳)
00/01
ゴットヴァルト(25歳)
04/05
マンニネン(27歳)
99/00
ラユネン(21歳)


FIS SUMMER GRAND PRIX 2008
date
Site
前半
後半
勝者
総合
26.07.
Hinterzarten GER
HS 108
7×2.3km Hettich Hettich
29.07.
Oberstdorf
GER
HS 137
9×1.75km Stecher Stecher
01.08
Einsiedeln SUI
HS 117
8×1.85km Heer Stecher


FIS WORLD CUP NORDIC COMBINED 2008/2009 
1st Period
Date
Site
HS
winner
overall
29.11.
Kuusamo
FIN 142 I.G. Ackermman Ackermman
30.11. 142 I.G. Koivuranta Koivuranta/Ryynaenen
06.12. Trondheim
NOR 131 I.G. Moan Koivuranta
07.12. 131 I.G. Koivuranta Koivuranta
13.12. Liberec CZE 134 I.G. cancelled
14.12. 134 I.G. cancelled
20.12. Ramsau AUT 98 I.G. Demong Koivuranta
21.12. 98 I.G. Kircheisen Koivuranta
2nd Period
27.12. Oberhof GER 140 I.G. Moan Koivuranta
28.12. 140 I.G. Koivuranta Koivuranta
03.01. Schonach GER 96 Team GER
04.01. 96 I.G. Koivuranta Koivuranta
3rd Period
10.01. Val di Fiemme ITA 134 Mass. Kircheisen Koivuranta
11.01. 134 I.G. Moan Koivuranta
16.01. Vancouver-
Whistler
CAN 140 I.G. Demong Koivuranta
17.01. 140 I.G. Moan Koivuranta
4th Period
31.01. Chaux-Neuve FRA 100 I.G. Moan Koivuranta
01.02. 100 I.G. Koivuranta Koivuranta
07.02. Seefeld AUT 100 Team
I.G.
Stecher Koivuranta
08.02. 100 I.G. Moan Koivuranta
14.02. Klingenthal GER 140 I.G. Koivuranta Koivuranta
15.02. 140 I.G. Demong Koivuranta
FIS NORDIC WORLD SKI CHAMPIONSHIPS
19.02. Liberec CZE 100 Mass Lodwick
22.02. 100 IG NH Lodwick
26.02. 134 Team JPN
28.02. 134 IG LH Demong
5th Period
06.03 Lahti FIN 130 I.G. Demong Koivuranta
07.03. 130 I.G. Moan Koivuranta
14.03 Vikersund NOR 117 I.G. Koivuranta Koivuranta
15.03 117 I.G. Demong Koivuranta

IS CONTINENTAL CUP NORDIC COMBINED 2008/2009 
1st Period
13.12. Partk City/
Soldier Hollow
USA 100 Lodwick Lodwick
14.12. 100 Lodwick Lodwick
17.12. Vancouver/
Whistler
CAN 106 Lodwick Lodwick
18.12. 106 Kammerlander Lodwick
2nd Period
03.01. Eisenerz AUT 100 Menz Lodwick
04.01. 100 Welde Lodwick
3rd Period
10.01. Klingenthal GER 140 Wendel Lodwick
11.01. 140 Guenter Lodwick
17.01. Bischofshofen AUT 140 Dvorak Menz
18.01. 140 Wendel Menz
24.01. Kranj SLO 109 Oranic Menz
25.01. 109 Jelenko Guenter
4th Period
31.01. Neustadt-
Hinterzarten
GER 142 Bjoern Guenter
01.02.
142 Guenter Guenter
07.02.
15.02.
Karpacz POL 94 cancelled
08.02.
14.02.
94 cancelled
28.02. Wisla POL 134 Klemetsen Guenter
01.03. HS134 Klemetsen Guenter
5th Period
07.03. Hoeydalsmo NOR 94 Nermoen Guenter
08.03. 94 Druml Menz
13.03. Rovaniemi FIN 100 Reuschel Menz
14.03. 100 Menz Menz
15.03. 100 Kammerlander Menz