FIS WORLD CUP NORDIC COMBINED 2006 SAPPORO

::: HOME | ANOTHER COMPETITIONS | SKI JUPING & NORDIC COMBINED:::

3月15日(水) 選手到着
いよいよWC最終戦、札幌大会。前週の開催地、オスロから自国に戻らずに直接、札幌入りしたいくつかのチームを除いて、ほとんどがきょう、千歳空港に到着。クロスカントリーWCと同時開催なのですごい人数である。

アッカーマンは来ない:純ジャンプとちがって、シーズン最終戦、ほとんどの選手が顔を見せた札幌だが、アッカーマンだけは来なかった。彼の名前は参加者名簿にあった。実際、ドイツスキー連盟がエントリーを取り消したのは直前だったのだろう。第3ピリオドが始まる前、アッカーマンはドイツのTV局、ZDFのコラムで「シーズンの終わりに全力を尽くす」と書いているのだが、ラハティとオスロについてしか触れていない。ああ、きっと札幌には来ないつもりなんだな、と思った。13日の同コラムには「札幌へ行って最後の2戦を戦うのを辞めてマテリアルテストに行く」とある。今シーズンはもう疲れたのだろう。来季、また総合優勝を目指すという。

3月16日(木) クロカントレーニング+記者会見
午後、クロスカントリーコースオープン。

WC総合 第19戦オスロ終了時点
11
マンニネン(FIN)
1320点
12
モアン(NOR)
1875点
13 キルヒアイゼン(GER) 1758点
14 タンデ(NOR) 1732点
15 ヘティッヒ(GER) 1653点
16 ゴットヴァルト(AUT) 1650点
17 ビーラー(AUT) 1601点
18 ラミィシャプイ(FRA) 1598点
19 アッカーマン(GER) 1593点
10 シュテヒャー(AUT) 1592点
14 高橋大斗(JPN) 1358点
19 小林範仁(JPN) 1232点
39 畠山陽輔(JPN) 1109点
53 北村隆(JPN) 1833点
夜、WCランキングベスト3+ゴットヴァルト(個人金メダリストでWC4位のヘティッヒではなく、5位で団体とスプリントの金メダリストのフェリックスが呼ばれた)に日本の高橋大斗、小林範仁両選手を加えて、記者会見が行われた。全員5分前には集合。純ジャンパーとは大違い。

−今季の感想と札幌大会での目標。
ハンヌ・マンニネン:
今季のWCはよかった。このところよくないが。五輪の団体戦のあと体調を崩し、回復できなかった。札幌は最終戦なので楽しみにしている。過去、いい思い出もある(札幌では目下4連勝中)。ベストを尽くします。

マグヌス・モアン:今季はよかった、表彰台にも乗ったし。スプリント総合では2位になれた(注:この時点ではスプリントは全試合終わり、ランキングは確定していた)。WC総合では今は2位だけど、3位との差は120点。あと2つ終わってもこの順位でいるためにがんばる。

ビヨルン・キルヒアイゼン:とてもいいシーズンだった。最初のころは特にジャンプがよくなかったが、だんだんよくなり、最後の2戦はよかった。今、3位で4位と30点差しかないので是非、3位を守りたい。

フェリックス・ゴットヴァルト:ハンヌがあまりにもよかったので、自分は早い段階で総合は諦めてしまった。その分、五輪に集中できたので、よい選択だったのではないか。自分のキャリアの中での一番の目標を達成できた。このところジャンプはよくないがクロカンは絶好調。大倉は好きだし、いいジャンプをしたい。来年は続けるかまだわからないが、新しいクロカンコースを走って感じをつかみたい。

高橋大斗:シーズン当初、特に走りは夏にやってきたことを出せず、中盤、走れるようになって、五輪に入って、腰のこともあり、ジャンプが悪くなり、きっかけを失った。オスロでは自分のジャンプができたので、最後の札幌では是非、いい走り、いいジャンプをして、全力を尽くします。

小林範仁:WC-Bスタートだったので、この試合に出られるとは思っていなかった。地元での出場を喜んでいる。調子がよくなってきているので、地元戦を楽しみながらがんばりたい。

マンニネンに
−トリノで調子がよくなかったのはどうして?
マンニネン:
いい質問ですね(笑)。でもボク自身もわからない。シーズン始めはほぼパーフェクトだったし、五輪の準備もよくできた。でもまったくクロカンで走れなかった。理由はわからない。
−札幌のコースはどうですか?トリノよりは簡単だと思うが...
マンニネン:
トリノでよくなかったのはコースが理由じゃない。札幌は、きょう走ってみたが、天気がきょうのようで、雪が柔らかくてスローなら、ハードになるが、いい成績を出したい。

−今年は世界選手権のプレ大会になるが、来年に向けてのチェックポイントは?
マンニネン:
札幌はよく知っている大会地で何年も試合をしてきている。でも今年のコースは違うのでチェックしたい。これまではもっと早い時期の大会だったので、暖かい気候で戦うのもチェレンジだ。

モアン:来年の札幌ドームでのスプリントはたくさんお客さんが来るでしょうね。今年もドームで走りたかっのに、残念だなぁ。たぶんお金がかかるからかな(筆者注:それもあるけど、日ハムの試合があった)。まぁ、来年を楽しみにします。

キルヒアイゼン:大倉山と白旗山はチェックできるけど、ノーマルヒルがチェックできない。地元でトレーニングをして補います。今回も来年も楽しみにしている。

ゴットヴァルト:宮の森はチェックできなかったんだよね...ショッピングに忙しかったもので...オーストリアチームは2日前に着いて、ダウンタウン(つまりススキノ)とかチェックしてたので時間がなくなっちゃった。コンディションは難しいけど、今回は楽しく参加したいです(ニコリ)。

大斗に
−オリンピックのときと比べて今の状態と目標。
高橋:
腰は傷めた直後は痛かったが、団体戦では戻っていた。ジャンプの感覚はなかなか戻らなかった。でも今は戻ってきているので、表彰台を目指してがんばります。今季は一度も上がっていないので。


3月17日(金) クロカントレーニング+ジャンプ公式練習
1本目
2本目
3本目
ゲート
(26)
(28)
(31)
北村隆(JPN) 172.0m 199.5m
渡部暁斗(JPN) 181.0m 121.0m 123.0m
リューナネン(FIN) 103.5m 109.5m 134.0m
(29)
畠山陽輔(JPN) 111.5m 124.0m 109.5m
小林範仁(JPN) 112.0m 105.5m 100.5m
(30)
高橋大斗(JPN) 120.0m 127.5m 122.0m
タッルス(FIN) 109.0m 115.0m 122.0m
コイヴランタ(FIN) 112.5m 115.0m 128.0m
シュテヒャー(AUT) 106.5m 108.0m 114.0m
ラミィシャプイ(FRA) 105.5m 116.0m 128.0m
(29)
ビーラー(AUT) 110.0m 114.5m 119.0m
ゴットヴァルト(AUT) 194.0m 198.5m 102.0m
ヘティッヒ(GER) 112.0m 114.5m 110.5m
タンデ(NOR) 106.0m 109.0m 120.0m
キルヒアイゼン(GER) 116.5m 116.0m 125.0m
モアン(NOR) 100.5m 123.0m 129.5m
マンニネン(FIN) 193.0m 191.5m 121.0m
午前中、クロカンコースオープン。

夕方からジャンプの公式練習。4時開始の予定が、暖かいため、雪が少しでも締まるのを待って1時間遅れて始まった。マススタートのジャンプはナイターで行われる。

わりと穏やかな天気ではあるが、風は春の風。いつもにも増して安定せず、あったりなかったり。加えて、最終戦でみんな疲れてるのかな、と思う。

これまでWCをフル参戦していないので、元気があるのか、リューナネンの3本目、134mが最長不倒だが、ゲートも一段と高い。

重たい雪のクロスカントリーを誰がどのくらい頑張る(気がある)か。安定しているのは第3ピリオドの覇者たち。スプリントで2連勝しているキルヒアイゼンとモアン、タンデ。AUT勢の不調が気になる。

マススタート、ビーラーあたりいってほしいけど、どうなんだか...とりあえず、きょうはあまりよくなかった。


3月18日(土) WC 第20戦 札幌大会 マススタート 前半10km(2.5km×4)
今季、マススタートが行われるのは3試合目。前半がクロスカントリーで後半がジャンプ。一般に、ジャンプが得意な選手に有利な試合方式とされていて、ラムザウではタンデ、ヴァルディフィエンメではマンニネンが勝っている。クロカンスタートはWCランキング順に並んで一斉スタート(マススタート)する。フロントローは総合1位のマンニネンから11位のタッルスまで。2列目は12位から22位、3列目23〜33、最後が34〜39。日本勢は高橋選手が12位で2列目のセンター、小林選手も2列目、畠山選手は3列目で、WC初参戦の渡部選手は最後の4列目。水泳と同じように中央に強い選手が並ぶ。スタートして50mはスケーティング禁止。それから位置取りに走る。

スタートしてすぐの登りで先頭をひくゴットヴァルト。3番目、イエロービブがマンニネン。
これまではスタートすると橋をくぐる北コースだったが、新しいコースはスタートから"し"の字を描くように半周ほどして南へ進路を取る。スタジアムから見えるところが最初の登りになっていて、見ていておもしろい。去年までのコースは一斉スタート直後、集団走行のうちに下りカーブでマススタートには不向きという意見もあった。クロスが得意じゃない選手は離されないように前についていけば単独で走るよりは速く走れると言われるマススタートだが、このコースはまずこの坂で一列になる。1.5km、一番きつい坂でモアンはトップに立ったが、飛ばしすぎたのか5km地点ではゴットヴァルト、マンニネン、キルヒアイゼンのトップグループから脱落した。

7.5kmまではほとんど差がないトップの3人だったが、最終周の最後の坂でゴットヴァルトがスパート。マンニネンには疲れが見え、このアタックがあっさりと決まる。ゴットヴァルト、身長178cm。スポーツ選手としてはもちろん、一般的なヨーロッパ人男性としても決して大きくない。TV画面で見るとマンニネンより一回り小さい。上半身がまったくブレない男前な走り。効率がいいように見える。例えばキルヒアイゼンは確かに速いが、長い手足が邪魔そうだ。結構な差をつけてスタジアムに入ってきたゴットヴァルト。クロカン絶好調は続いていて、7戦連続のトップタイム。

マススタート 前半クロスカントリー 結果
タイム
タイム差
得点
点差
11 ゴットヴァルト(AUT) 29:02.7
-
120.0点
-
12 マンニネン(FIN) 29:07.7 +5.0 118.7点 -1.3点
13 キルヒアイゼン(GER) 29:15.6 +12.9 116.7点 -3.3点
14 モアン(NOR) 30:05.6 +1:02.9
104.2点
-15.8点
15 S.フーシュラー(SUI) 30:05.9 +1:03.2 104.2点 -15.8点
16 ハーゼナイ(GER) 30:16.6 +1:13.9 101.5点 -18.5点
17 シュテヒャー(AUT) 30:16.9 +1:14.2
101.5点
-18.5点
18 A.フーシュラー(SUI) 30:17.0 +1:14.3 101.5点 -18.5点
19 タンデ(NOR) 30:17.3 +1:14.6 101.2点 -18.8点
10 ビーラー(AUT) 30:18.1 +1:15.4 101.2点 -18.8点
11 ラミィシャプイ(FRA) 30:18.8 +1:16.1 101.0点 -19.0点
18 畠山陽輔(JPN) 30:35.1 +1:32.4 197.0点 -23.0点
19 小林範仁(JPN) 30:36.4
+1:33.7
196.5点 -23.5点
21 コイヴランタ(FIN) 31:08.3 +2:05.6 188.5点 -31.5点
24 高橋大斗(JPN) 31:12.1 +2:09.4 187.7点 -32.3点
30 北村隆(JPN) 31:30.1 +2:27.4 183.2点 -36.8点
31
ヘティッヒ(GER)
31:32.4
+2:29.7
182.5点
-37.5点
32 タッルス(FIN) 31:40.4 +2:37.7 180.5点 -39.5点
35 渡部暁斗(JPN) 32:15.9 +3:13.2 171.7点 -48.3点
マススタートは、前半クロカンで1位ゴールした選手に120点、2位以下は1秒未満を四捨五入したタイム差を1分15点、1点4秒で得点に換算し、トップの120点からマイナスする。それを持ち点に後半のジャンプをスタートする。

上位にはもちろん走りが速い選手が並んだが、シュテヒャー、タンデ、ビーラー、ラミィシャプイあたりがジャンプでどこまで追い上げるか。

5位のS(ゼッピ).フーシュラーと8位のA(アンドレアス).フーシュラーは兄弟。アンドレアスが6つお兄さん。兄の方がWCランキングもクロスの評価も上なのだが...。ちなみにAUTのミヒャエル・グルーバーとベルンハート・グルーバーは赤の他人である。

3月18日(土) WC第20戦 札幌大会 マススタート 後半ジャンプ HS134
試技結果
距離(ゲート)
渡部暁斗(JPN) 109.0m(35)
リューナネン(FIN) 101.0m(35)
タッルス(FIN) 105.0m(35)
ヘティッヒ(GER) 102.5m(37)
北村隆(JPN) 192.0m(37)
高橋大斗(JPN) 112.5m(37)
コイヴランタ(FIN) 119.5m(37)
小林範仁(JPN) 113.0m(39)
畠山陽輔(JPN) 118.5m(39)
ラミィシャプイ(FRA) 127.0m(39)
ビーラー(AUT) 124.5m(39)
タンデ(NOR) 127.5m(39)
S.フーシュラー(SUI) 112.5m(39)
シュテヒャー(AUT) 110.0m(39)
ハーゼナイ(GER) 198.0m(39)
モアン(NOR) 121.0m(39)
キルヒアイゼン(GER)
193.0m(39)
マンニネン(FIN) 107.5m(39)
ゴットヴァルト(AUT) 108.0m(39)
16時開始の試技は16時15分に変更されていたが、これがさらに遅れ、始まったのは30分を過ぎたころ。
ゲートは一定ではなかったが、ラミィシャプイ、ビーラー、タンデ、そしてモアンといったところがきょうも距離を出している。ゴットヴァルトはこのくらい飛べれば表彰台もなくはないが、勝てる気はしない。最後に飛ぶってすごく緊張する(私がか...)。総合では5位ヘティッヒとは3点差、4位タンデとは82点差。4位にはなれないね、きっと...。

1本目、不安定な風の中、だましだましジャンプが続けられたが、あと3人を残して中断。ここで中断ということは、再開しても1番から飛び直し。風は強くなるばかり...。18:45ジュリーミーティング、きょうの中止が決定。で、どうするのか?! とりあえず明日のグンダーセンをスプリントに替えて、最低1本飛んで1試合は成立させる。シーズン最終戦ですから...。
う〜ん、どっかで聞いたな、この決断...そうだトリノだ。団体戦、強風のために2本目が中断。その後中止となり、翌日、2本目から再開した。選手が安全に飛べることもさることながら、FISは近年、公平に試合を行うことに主眼を置いている。

中止が決まったときビーラーがトップだった。続いていたら彼が初優勝を遂げていたという保証はないけれど、なぜかマンニネンが勝たない確証だけはあった。ジャンプとクロスが同日に行われるようになって久しいが、やっぱり決着はその日のうちに着くべきだ、と思う...。

3月19日(日) WC第21戦 札幌大会 スプリント 前半ジャンプ HS134
11 ラミィシャプイ(FRA) 134.0m/130.8点
-
12 ヘティッヒ(GER) 135.5m/129.6点 +0:05
13 ビーラー(AUT) 133.5m/127.2点 +0:14
14 タンデ(NOR) 130.0m/126.5点 +0:17
15 リューナネン(FIN) 127.5m/123.5点 +0:29
16 シュテヒャー(AUT) 125.0m/120.0点 +0:43
17 タッルス(FIN) 123.5m/119.2点 +0:46
18 S.フーシュラー(SUI) 122.5m/116.5点 +0:57
19 クライナー(AUT) 121.5m/115.8点 +1:00
10 リーダー(SUI) 121.0m/115.2点 +1:02
10 シュミット(SUI) 121.0m/115.2点 +1:02
12 マンニネン(FIN) 121.5m/114.3点 +1:06
13 キルヒアイゼン(GER) 119.5m/111.9点 +1:18
15 渡部暁斗(JPN) 119.5m/111.4点 +1:18
21 小林範仁(JPN) 116.0m/107.7点 +1:32
23
高橋大斗(JPN)
115.0m/106.5点
+1:37
24 モアン(NOR) 115.5m/105.6点 +1:41
28 畠山陽輔(JPN) 110.0m/100.5点 +2:01
30 ゴットヴァルト(AUT) 109.0m/197.8点 +2:12
31 北村隆(JPN) 108.5m/197.2点 +2:14
さて、きょうは飛べるのだろうか?

一抹の不安を抱えながらジャンプ台へ向かう。風も穏やかではなかったし、何と言っても、雪の予報だったから。まずはスプリントのジャンプを1本やっつける。

試技を飛んだのはCAN、FIN、FRA、USAのみ。
1日に4本は多すぎるのか、集中できないものなのだろうか? 試技を飛ぶにはホテル7時出発だったから、それなら少しでもゆっくりした方がいいだろう...。

飛び始めてすぐ、7人でキャンセルになったときは少し焦った。スピードが出なくてゲートを上げただけで、この7人は飛び直すから、回収したビブを急いで返す。それを配ってくれたのが2番スタートのミスリッキィ(CAN)。USチームと一緒に練習しているカナダは、今後、予算が付かず、もう来年はないのだという...。バンクーバ五輪もあるというのに、残念だ。一方のUSAは元複合のコーチで現純ジャンプのヘッドコーチ、コルビー・フィッシャーがUSAスキー連盟と方針が合わず辞任、チーム解散の危機に瀕しているらしい...。

試合はヒルサイズを飛んだラミィシャプイがトップ。ヘティッヒはそれより1.5mも飛んでいたが、飛型点の差で2位。ビーラー、タンデと、130mオーバーしたジャンプ得意の選手が続く。 このタイム差なら、マンニネン、キルヒアイゼンが本命か。ゴットヴァルト、2:12差。シーズン最終戦も全力疾走ですか...(泣)。

27歳、大学生金メダリスト、ゲオルク・ヘティッヒ。「すごかったね、おめでとう」と言うと「でしょ。信じらんないよね」とはにかむ。愛称:マルちゃん(札幌限定)。
ドイツのある全国紙が挙げた彼の金メダルの勝因は「質素さ」だという。たしかにWCの選手の中でも、とびきり普通かもしれない...。

3月19日(日) WC第21戦 札幌大会 マススタート 後半ジャンプ HS134(しきり直し)
スプリントのジャンプが成立してホッとしたのも束の間、昨日できなかったマススタートのジャンプが行われた。
マススタートのジャンプはいわゆる飛型点は採点されず、基本的に飛距離点のみ。ラージヒルではK点(大倉山は120m)が60点で、±1mにつき±1.2点。ノーテレマークが4.8点、転倒が10.8点の減点。例えば前半1位のゴットヴァルトと10位のビーラーの点差は18.8点。単純計算ではビーラーがゴットヴァルトより16m遠くに飛べばトップに立つ。

1本目が終わって、クロスで3位だったキルヒアイゼンがトップ。ビーラーは10位から5位まで順位を上げるも、クロスのアドバンテージ抜きで、ジャンプの順位の1・2はクロカン型のキルヒとマンニネン。スプリントのジャンプでは上位にちゃんとジャンプ得意な選手が来ているので不思議だ。やはり、ここ一発と力むのだろうか?
高橋選手は13位。北村選手は79m、ノーテレマークの減点で残念ながら2本目に進めなかった(マススタートの2本目は30人で足切り)。
1本目3位にとどまっていたゴットヴァルトは2本目、まったく振るわず9位。ジャンプだけだと27位。
「五輪後、感覚をつかめない。1本目は自信にはつながりこそしなかったが、そのあと、さらに失速。こういった条件でうまく飛ぶのは、100%調子がよくなければ難しい」

マススタート結果
前半CC
後半ジャンプ
総点
1本目
*
2本目
**
11 マンニネン(FIN) 118.7点(2)
124.5m/65.4点(12)
12 122.5m/63.0点(12) 11
247.1点
12 キルヒアイゼン(GER) 116.7点(3) 127.5m/69.0点(11) 11 114.5m/53.4点(13) 13 239.1点
13 ビーラー(AUT) 101.5点(10) 120.0m/60.0点(15) 15 125.0m/66.0点(11) 12 227.2点
14 モアン(NOR) 104.2点(4) 113.5m/52.2点(11) 16
119.0m/58.8点(15)
17 215.2点
15 コイヴランタ(FIN) 188.5点(21) 123.5m/64.2点(13) 17 118.0m/57.6点(16) 14 210.3点
16 シュテヒャー(AUT) 101.5点(7) 120.0m/60.0点(15) 14 110.0m/48.0点(19) 18 209.5点
17 高橋大斗(JPN) 187.7点(24) 115.5m/46.8点(19) 14
121.0m/61.2点(13)
15 203.5点
18 ラミィシャプイ(FRA) 101.0点(11) 113.0m/51.6点(13) 18 109.5m/47.4点(11) 12 200.0点
19 ゴットヴァルト(AUT) 120.0点(1) 115.0m/54.0点(10) 13 190.5m/24.6点(27) 22 198.6点
10 タッルス(FIN) 180.5点(32) 113.5m/52.2点(20) 11 120.0m/60.0点(14) 16 192.7点
11 小林範仁(JPN) 196.5点(19) 113.0m/51.6点(13) 19 107.0m/44.4点(18) 13 192.5点
13 タンデ(NOR) 101.2点(9) 108.5m/46.2点(19) 10 106.0m/43.2点(21) 16 190.6点
14 ヘティッヒ(GER) 182.5点(31) 122.0m/62.4点(14) 11 108.0m/45.6点(14) 18 190.5点
19 渡部暁斗(JPN) 171.7点(35) 117.5m/57.0点(18) 26 109.0m/46.8点(12) 10 175.5点
22 畠山陽輔(JPN) 197.0点(18)
109.0m/46.8点(18)
12 195.0m/30.0点(24) 25 173.8点
38 北村隆(JPN) 183.2点(30) 179.0m/16.0点(38) 38 289.2点
*1本目が終わってクロスとジャンプの得点を合算した順位。 ()はジャンプ1本目だけの順位。
**ジャンプ2本の合計順位。 ()は2本目のみの順位。

結局、2本まとめた、というかジャンプトップだったマンニネンが、五輪前、1月末のゼーフェルトぶりに優勝。今季21戦中12勝目、通算43勝を上げた。今季のマススタート3戦中2勝目。

3位になってご機嫌のビーラー。まげづらはノイズチームからのプレゼント?
マンニネン:「走りでやっと復調できた。条件は難しかったがジャンプには満足。昨日はジャンプがキャンセルになってうれしかった、とても疲れていたから。休養して朝はモチベーションがあった」

キルヒアイゼン:「この結果にはもちろん満足。昨日の走りはまぁうまくいった。コースはとても重くて遅かったが、ジャンプでは風の運もあった。昨日キャンセルになってよかった、フェアな条件ではないと思ったから。風はきょうの方がずっとよかった」

ビーラー:「本当にとても満足。この順位はうれしい。すばらしい成績だと思う。とくに昨日の走りは。条件は走りもジャンプも本当に大変で、昨日、リードしていたのに中止になったときはうれしくなかった。でも、いつまでも文句を言うのではなく、もう一度きょうのためにモチベーションを上げようと思った。この順位は順当だと思う」

第20戦 ワールドカップ総合
11
マンニネン(FIN)
1420点(←1)
12
モアン(NOR)
1925点(←2)
13 キルヒアイゼン(GER) 1838点(←3)
14 タンデ(NOR) 1752点(←4)
15 ゴットヴァルト(AUT) 1679点(↑6)
16 ヘティッヒ(GER) 1671点(↓5)
17 ビーラー(AUT) 1661点(←7)
18 シュテヒャー(AUT) 1632点(↑10)
19 ラミィシャプイ(FRA) 1630点(↓8)
10 アッカーマン(GER) 1593点(↓9)
14 高橋大斗(JPN) 1394点(←14)
19 小林範仁(JPN) 1256点(←19)
38 畠山陽輔(JPN) 1118点(←39)
51 渡部暁斗(JPN) 1847点(↑)
53 北村隆(JPN) 1833点(↓53)
WC総合では上位4位は変わらず。マンニネンがダメ押しで最高点の100点を追加。

ゴットヴァルトはジャンプでクロスの3位から9位に順位を下げたが、総合では3点差の5位だったヘティッヒが14位だったので5位に上がった。たったの8点差だ。

1位から4位、メンバーはこれで決まりだが、例えば、キルヒアイゼンが勝ってモアンが19位以下ならキルヒは2位に、タンデが勝ってキルヒアイゼンが18位以下だったらタンデが3位に上がるが、可能性は低そう。7位以下も接戦だ。

とにかくあとはスプリントの7.5kmを走るのみ。


3月19日(水) WC第21戦 札幌大会 スプリント 後半クロスカントリー7.5km(3.75km×2周)
前半
後半
11 ラミィシャプイ(FRA) 11位
-
19:15.0(17)
12 マンニネン(FIN) 12位 +1:06 18:32.0(12) +23.0
13 タンデ(NOR) 14位 +0:17 19:28.3(10) +30.3
14 キルヒアイゼン(GER) 13位 +1:16 18:43.4(13) +44.4
15 ビーラー(AUT) 13位 +0:14 20:07.0(23) +1:06.0
16 ヘティッヒ(GER) 12位 +0:05 20:21.5(28) +1:11.5
17 モアン(NOR) 24位 +1:41 18:50.3(14) +1:16.3
18 シュテヒャー(AUT) 16位 +0:43 19:49.0(18) +1:17.0
19 ゴットヴァルト(AUT) 30位 +2:12 18:21.1(11) +1:18.1
10 S.フーシュラー(SUI) 18位 +0:57 19:37.4(13) +1:19.4
15 小林範仁(JPN) 21位 +1:32 19:24.1(19) +1:41.1
24 渡部暁斗(JPN) 15位 +1:18 20:34.5(33) +2:37.5
27 畠山陽輔(JPN) 28位 +2:01 20:09.7(25) +2:55.7
32 高橋大斗(JPN) 23位 +1:37 20:59.3(36) +3:21.3
33 北村隆(JPN) 31位 +2:14 20:37.8(23) +3:36.8
昨日、マススタートのジャンプが中止なったために最終戦のグンダーセンはスプリントに変更になった。

ジャンプが2本から1本になったということは、ジャンプ得意な選手にとっては、倍の差をつけられるところ、その半分しかクロス得意な選手に対してアドバンテージを得られないということである。反面、逃げ切れる可能性は高まり、クロス得意の選手にとっては半分の距離でどこまで追い上げられるかということでもある。

前半ジャンプをトップで終えたラミィシャプイ。マンニネンと1分6秒差というのは決して安全なリードではない。2位との差も僅かだったが、1人トップをひた走った。その後をタンデ、ヘティッヒ、ビーラーが追う。マンニネンがキルヒアイゼンを伴って迫ってくる。追いつかれるのは時間の問題と思われた。逃げて! ジェイソン!! そして最後にスタジアムにトップで入ってきたのはジェイソンだった。初優勝!! 五輪明け、8位、4位、2位、5位。勝てそうで勝てなかった。「もう少し走れるようにならないとね」と誰もが思っていただろう。それが札幌では...。みんな、とくに前の方は全力で走っていたと思う。それでも初優勝へと向かうジェイソンのモチベーションが一番高かったのかもしれない(ヘティッヒだって、ビーラーだって、勝てば初優勝だったのだけど)。フランスにとって10年ぶりの優勝だという。ルーとアルヌールは今季で引退するが、いい新人が出てきた。

左から:マンニネン、うれしい初優勝のラミィシャプイ、かったるいけど頑張った3位タンデ。
ラミィシャプイ:「最高の最終戦。日本は初めてなのに、勝つことができた。もちろん来年の世界選手権の自信になる。ジャンプはとてもよかったし、風の運もあった。走りはすごくうまくいった、ちょっとビックリするぐらい。足が元気で、スキーもよかったけど、最初にゴールを切れるなんて信じられなかった」

ジェイソン・ラミィシャプイ:1986年9月9日生まれ、19歳。お母さんはアメリカ人。身長179cm、体重65kg。WCデビューは2004年。


2005/2006 スプリント総合
最終得点(Osloまでの順位と得点)
11
マンニネン(FIN)
624点(←1位 544点)
12
モアン(NOR)
544点(←2位 418点)
13 キルヒアイゼン(GER) 450点(↑4位 400点)
14 ヘティッヒ(GER) 445点(↓3位 405点)
15 ラミィシャプイ(FRA) 397点(↑8位 297点)
16 タンデ(NOR) 391点(←6位 331点)
17 シュテヒャー(AUT) 364点(↓5位 332点)
18 ゴットヴァルト(AUT) 349点(↓7位 320点)
19 ビーラー(AUT) 279点(↑10位 234点)
10 アッカーマン(GER) 266点(↓9位 266点)
18 高橋大斗(JPN) 133点(↓17位 133点)
19 小林範仁(JPN) 132点(↑20位 116点)
41 畠山陽輔(JPN) 125点(↓43位 221点)
42 北村隆(JPN) 124点(↓39位 224点)
50 渡部暁斗(JPN) 187点(-3)

今季のスプリント10戦中、マンニネンが4勝。シュテヒャー、モアン、ゴットヴァルト、キルヒアイゼン、タンデ、そして最後にラミィシャプイが1勝ずつ。

最終戦のグンダーセンがスプリントに替わり、一度は決まっていたスプリント総合の順位が書き換えられた。
キルヒアイゼンが4位、ヘティッヒが6位になったことで、3位と4位が入れ替わり、キルヒアイゼンはスプリント総合でも表彰台に立った。着順によっては2位も可能だった。

キルヒアイゼンは02/03シーズン、トロンハイムで3連勝して総合でも3位。このシーズン、総合優勝したのが同邦のアッカーマン。今季は今イチだったアッカーマンだが、キルヒアイゼンは五輪後、ジャンプが安定してきて成績を出した。これでチームのエースが入れ替わるのか...?


2005/2006 ワールドカップ総合
2005/2006 WC 総合順位
11
マンニネン(FIN)
1500点(←1)
12
モアン(NOR)
8961点(←2)
13 キルヒアイゼン(GER) 8888点(←3)
14 タンデ(NOR) 8812点(←4)
15 ラミィシャプイ(FRA) 8730点(↑9)
16 ヘティッヒ(GER) 8711点(←6)
17 ゴットヴァルト(AUT) 8708点(↓5)
18 ビーラー(AUT) 8706点(↓7)
19 シュテヒャー(AUT) 8664点(↓8)
10 コイヴランタ(FIN) 8597点(↑11)
11 アッカーマン(GER) 8593点(↓9)
14 高橋大斗(JPN) 8394点(←14)
20 小林範仁(JPN) 8272点(↑19)
37 畠山陽輔(JPN) 1122点(↑38)
47 北村隆(JPN) 1854点(↑51)
55 渡部暁斗(JPN) 1833点(↓54)
WC総合は結局、4位までは順番もメンバーも変わらず。最終戦で優勝したラミィシャプイが8位から5位にジャンプアップ。その影響で、あとはほぼ順繰りに順位を落とした。

今季はマンニネンの総合優勝が早い段階で決まり、オリンピックもあった。札幌での最終戦の選手たちのモチベーションいくばくのものだったのか...?

もっと緊張感があるかと思いきや、明らかにみんな疲れていて、スタートするだけで満腹なのに、その上、エネルギーを奪うゼリー状の重たい深い雪...。総合でそれほど変わらないならなおさらだろう...。見ている方も「やる気あるの?」と尻を叩くより、「お疲れさま」という気持ちの方が強い。

札幌は来年のWMのことがあって別の意味で緊張感はあったが。


左から:どこから見ても田舎のお兄ちゃんモアン。女の子には結構人気がある。札幌には新婚の奥さん同伴でラブラブだったマンニネン。勝ち気なキルヒアイゼン。


そんな中でやっぱり「スゴい」と思ったのはゴットヴァルト。結果的にはこの最終戦で総合でもスプリントでも順位を落とした。で、何がそんなにすごいのかというと、やっぱり超一流のアスリートだということ(Portrait参照)。あまりの集中力に一度は現役続行を確信したのだが、ハワイで決めるということだったので、心配したけど...来季も期待してます。

札幌で念願のクリスタル杯を手にするマンニネン。
ハンヌ・マンニネン
1978年4月17日生まれ、28歳。身長189cm、体重83kg。今季WC12勝、通算43勝。1月29日、ゼーフェルト(AUT)で6戦を残して総合三連覇を決める。

「きょうのジャンプの条件は簡単ではなかったが満足。1分6秒はいいポジション。走りはうまくいき、2位には満足。スプリントを走る前にマススタートで勝てたことは、もちろんモチベーションになった。ゼーフェルトで総合は決まっていたが、今シーズンが終わり、カップを手にした。12勝というすばらしいシーズン。たぶん越えることはできないだろう。また来季もうまくいって、4度目の総合が獲れるといいと思う」

誰か、ハンヌを止めて!!


11
GER
2950点 18 USA 597点
12
FIN
2828点 19 CZE 130点
13 AUT 2558点 10 RUS 104点
14 NOR 2322点 11 ITA 831点
15 FRA 8944点 12 SLO 827点
16 JPN 8754点 13 EST 887点
17 SUI 8739点 14 CAN 882点
NATIONS CUP STANDING

最後にネーションズカップについて。
コンバインドの国別は上位4人のWCポイントの合計+チーム戦のポイントだが、今季、チーム戦は行われなかった(1戦予定されていたが変更になった)。

ゼーフェルトまではFINがトップだったが、オリンピックが明けてトップに立ったGERがそのまま優勝。マンニネンがド〜ンと稼ぐFINと、数で稼ぐGER。もっと大差がついているのかと思ったが...。

WC個人総合で、GERは20位以内に6人、FINとAUTは3人ずつ。WC参加資格があるのはGERが14人、AUT9人、FIN4人。10位以内に限定するとAUTが3人(7、8、9位)、FIN2人(1位、10位)、GER2人(3位、6位)だが、得点合計ではFINがAUTを上回る。

さよならパーティでのネーションズカップの表彰風景。スタッフも表彰されるのはうれしい。