2004 CONTINENTAL CUP SKI JUMPING IN SAPPORO

Report 27th Feb
1月8日 木曜日 公式練習
午前中は大倉山で、午後は宮の森で公式練習の予定。夕べから雪が降り積もる。暴風雪の予報。大倉山で1本飛べればいいところ、という予想。大倉山に着くと天気が悪くなるようには見えない。「ヘンなの」と選手が言う。
1本、無事に飛び終える。大ジャンプ、出ず。2本目、徐々に天気が悪くなる。最後の4、5人は少し危なかった。予定されていた3本目は中止。午後は宮の森に行く予定だが、とりあえず大倉に待機命令。選手控え室で昼食。1:00、宮の森の練習中止が決定し、退却。

夕方、空港にAUTを迎えに行く。AUTはほとんどの選手が6日、ビショッフスホーフェンのWCに1A枠で出場したため、遅れて到着。しかも総勢8名と参加枠いっぱい。この時点でCOC総合トップのロイツルはWCに出場するため来日を取りやめた。
1月9日 金曜日 FISコンチネンタルカップ2004
1月9日 金曜日 兼 第32回札幌オリンピック記念国際スキージャンプ競技大会
予報よりも実際の天気はいいが、予定時刻には出発できない。なにしろここ数日でどかっと雪が降り、ジャンプ台整備に時間がかかる。ジャンプ台に着くと天気はよく、整備もきちんと終わっていた。さすが日本(外国の中には2、30cm雪が積もっただけで試合中止になるところもあるそうだ)! 太陽さえ輝いている。最初に2本練習。遅れてきてぶっつけ本番のはずのAUTはラッキーだった。

11:00ごろ1本目開始。とくに滞ることもなく進み、2本、大ジャンプをしたAUTのシュテファン・カイザーの圧勝だった。2位ドネム(NOR)、3位トゥルンビヒラー(AUT)。この表彰台の写真が翌日の北海道新聞の朝刊に掲載される。日本人が誰も表彰台に乗っていないのに写真が載るなんて、しかもカラーでけっこう大きく、珍しい!!「明日、葛西と闘うのが楽しみ」(この日WC組は出場していない)というカイザーのコメントも載る。
1月10日 土曜日 FISコンチネンタルカップ2004
1月10日 土曜日 兼 第31回HTBカップ国際スキージャンプ競技大会
まるで舞台のセットの紙吹雪のように雪が降る。ベテランV.S.新鋭--ホストTV局、HTBは世代交代をテーマに放送を組み立てた。
試技でAUTのシュトリックナーが転倒。右の鎖骨を折って病院に運ばれた。高野鉄平、1本目135.5mの大ジャンプ。かなり激しい降雪でアプローチに雪が積もり、風が悪くても出さざるを得ない状況で、踏み切りでつまって失敗する選手も見られる。去年このCOCでダントツだった宮平に改善の兆しが見られない。葛西は1本目4位。
2本目、坂野幸夫、転倒。 背中からランディングバーンにたたきつけられる。さすがに翌日の試合には出ていなかったが、大事には至らなかったという。2本目、高野鉄平、79.0mで落ちる。15位。「楽勝だと思ったんすけどねぇ...」そして優勝は葛西へ。う〜ん、このメンバーで勝てないと困ります...。「吹雪の中、最後まで応援してくれてありがとう」というファンへのメッセージ。この試合では世代交代はならなかったようです。

クリストフ・シュトリックナーの転倒:少し追い風だったのかもしれない。控え室付近で見ていた。空中で体が揺れた。会場がざわつく。誰!? ゼッケンを確認する。66番。AUTだ...。ブレーキングトラックまで一目さんに走る。これまで数回、こんなことがあった。でも一度たりとも大事に至ったことはなかったんだけど...。「立てる? どこか痛い?」とても立ちあがりそうにない。「手袋が片方ない...」このときあまり心配しなかったのは彼にしっかり意識があり、しゃべっていたからだ。担架で医務室へ運ばれる。「(右肩を傾けて)こうやって転んだから、たぶんココ、折れてるよ」2つ前に飛んだコッホが鎖骨を指して言う。先生も確かにこれは折れてると言う。
救急車で病院へ。道が洗濯板状態でガタガタ。その振動が鎖骨に伝わると、とても痛がる。コーチと2人でストレッチャーを抑えて揺れを防ぐ。横になっている横顔を見ながらいろんな話をする。薄いブルーの目。「鼻、高いね〜!!」「中央ヨーロッパ人としてはふつうだよ」とコーチが言う。イヤ、すっとしていて高い、だいたいコーチよりずっと高いし...そんなくだらないことを言いつつ、西岡まで行った。
病院でレントゲンを撮る。鎖骨がポキポキポキッと三分割されている。複雑骨折。あ〜あ。診察を待つ間、すごい脂汗。座っていて貧血を起こしたのだ。骨折と診断され、腕はすでに大倉で固定してもらっていて、それ以上できることもないので、痛み止めの薬をもらって終わり。手術は国に帰ってから。ベッドから体を起こすとき、首に力がかかると折れたところがとても痛いらしく、起きるのを手伝う。頭が小さくて、180cm以上あるのにとても軽かった。 「転倒したことはあるけど、骨折したのは初めて」まだ18歳...。とてもいたいけな感じ。前日の金曜日には10位。コーチ曰く、彼はラージのスペシャリストで、ノーマルで10位というのはとても評価できる、と。だから条件がよくないのに攻めすぎて転倒したのか...。
1月11日 日曜日 FISコンチネンタルカップ2004
1月11日 日曜日 兼 第34回STVカップ国際スキージャンプ競技大会
曇り、微風。昨日、葛西選手が勝ったせいか、お客さんの入りがいい。STVは8台のマトリックスカメラを使って放送。意味あるんだろうか? 飛ぶ前には今大会の目標がアナウンスされ、本人たちの声も流れるという演出。「会場では各国の選手に合わせた曲がかけられているようだ」と永井アナは言っていたけれど、どうも外国人選手のときに流れていたのはAUTの国歌で、表彰式じゃあるまいし、すごくヘン、とのことだった。ジャンプ週間では日本選手が飛んだあと中華風のジングルと銅鑼の音(わかります?)が流れていたけれど、確かに、飛ぶとき『君が代』が流れてたらヘンだ。
後半はK点越え連発。一戸129m。コッホ131m。132.5m東。船木139m。葛西が138mながら飛型点でトップに出る。1本目にスーツコントロールが行われた。検査を受ける選手は試合前に選ばれるのだが、COCのコーディネーターが選んだ選手がことごとくいいジャンプをする。細山選手はスーツの規定違反で残念ながら失格となった。1本目が終わって1位葛西、2位船木、3位東と日本人が占める。

2本目はおもしろくなりそう...。誰もがワクワクしながら休憩に入ったはず。ところがインターバルで突如として風が出て雪が降り始める。あんなにいい天気だったのに...信じられない。ずいぶん待った。そしてジュリーは打ち切りを決める。テレビ放送ではCMがあけると画面が真っ白!! 突然、2本目の打ち切りが告げられ、1本のみの結果が採用されることに。そして葛西の優勝インタビューと表彰式が始まる。葛西はSTV杯は15年ぶりの優勝だという。表彰式の間も時折、立っているのが困難なほどの強い風が吹く。コッホがコンチでは2位に入る。最近不調な日本選手ですが、さすがにWCの壁は厚い。葛西強しの週末でした。
《各国選手の印象》
空サッツをするハンス・ぺトラット。
GER:開幕当初はAチームにいたミヒャエル・ノイマイヤーは、今は調子が悪くコンチで飛んでいる。今後の目標はと聞くと「07年札幌WM」と気を遣ってくれた。
シュミット、ハナヴァルトが不調のドイツチームはそろそろ世代交代。それが来シーズンの地元オーバーシュトドルフのWMなのか、トリノなのかはわからないけど...。
ハンス・ペトラッ
は本当に本当に細い。ジャンパーはみんな細いけど、もう折れそう...。
カイくん(ブラハト)はウエアを着てないと普通の人で、スポーツ選手にはとても見えない。で、ジャージではなく、ふつうの格好してることが多い...。

KOR:チェ・ドンクックコーチは韓国選手(日本選手も)の身長が低く、助走スピードが出ないことをしきりに強調する。エンゲルベルクで転倒したチェ・ホンチルはまだドイツに滞在していて、13日、帰国する。その後、体調がよければ白馬に来たい。
KORのジャンパーは現在6人。 WCやCOCに出ている4人に加えて、あと2人いるが、その2人はまだK90を飛び始めたばかり。青森アジア大会で日本を敗り、金メダルを取ったので、全員兵役が免除になったんだそうだ。「ありがとう、日本!!」

POL:ロベルト・マテヤはとても風格があり、どこぞの教授のよう...。トミスラフ・タイナーはタイナーナショナルコーチの息子さん。

チームAUT。左からシュナイダー、カイザー、フェットナー、ミュラー、ポイントナー(コーチ)、カルテンベック
AUT:カイザートゥルンビヒラーは成績通り調子がいい。カイザーは痩せていて、いつも顔色が悪い。大丈夫?
マルティン・コッホはこの夏、Aチームの中でも一番よかった。なのに今はここにいる...。いいジャンプはできる。9日も1本目は難しい条件でいいジャンプをしている(91.5m)。COCでいい成績を収められればまた調子も自信も戻ってくるだろうとのこと。
宮の森の試合の帰り、第一鳥居でバスを降りるとホテルまで走って帰ったコッホ。若いジャンパーもそれに続いてバスを降りた。

マルエル・フェットナーは身長が伸びただけでなく体のバランスが変わったので、今、とても難しい状態。合うマテリアルも探さなくてはいけないし。ホントにとても大きくなった。道ですれ違ったらわかるかな? 最近パッとしないと言わず、まだ十分若いんだから長い目で見ましょう。
ポイントナーコーチは去年からAUTのトレーニンググループ?を率いていて、去年は彼のチームからどんどん若手がWCに出た(リーグル、コフラー、ハーフェレ、ナギラーなど)
。トリノには、去年巣立っていった若手にも、今の若手にも出てほしいし、ゴルディ、ヴィドヘルツル、ヘルヴァルトらベテランは戦力としてだけでなく、存在自体がチームにとってとても大事なのだそうだ。今、話題のミカ・コヨンコスキについて聞かれ、彼の下で働いていたこともあるし、友人でもあるので、彼の成功はうれしいと言う。

マルティン・コッホに会うのは何度目だろう? いつの間にかもう「若手」ではなくなった。始めはAチームの選手としてWCに来たとき、そしてお父さん(コーチ)とライニー(シュヴァルツェンベルガー)と一緒に来たコンチ。その後も何度かWCに来ている。男の子って1人でいるときと友達といるときとちがう。もちろん彼を個人的に知っているわけではないので、選手ではなく一個人マルティン・コッホがどんな子なのかはわからないが、今回、とても大人になったなぁと感じた。シュトリックナーが転倒したとき。着替えを持ってきてくれたり、スキーを持ち帰るなどの 後始末をしてくれたり、自分も試合中なのになかなかできることではない...。病院に付き添ったコーチはチームと一緒に帰国しない予定で、アレックス(ポイントナー)は、あまり面倒見のいい人には見えず、パーティで彼の部屋に食事を運んでいたのもコッホだったし、荷造りも、そして飛行機に座って帰れないと言うから、そんな面倒もマルティンが見るのでしょう...。1本で終わった最終日、コンチでは東に継いで3.2点差の2位。「勝ってたかもね」というとやさしく笑った。金曜も土曜も1本しかいいジャンプはできていないのだけどね...。

FIN:写真はフィンランドのジャンプスーツ2種。
左:ハッリ・オッリ。右:キンモ・ユリリエスト。キンモのスーツが新型Qualのスーツ。生地がお尻のところでY字に継がれているのが見えますか?

NOR:今回2位、2位、4位と、一番安定していたのがオラフ-マグネ・ドネム。もとWC組。
キム-ロアー・ハンセンは札幌でもあちこちにスキーを置き去りにしていたけど(本人的には置いておいたんだろうけどね)、実はわすれんぼさんで、札幌に来る前にスーツをバスの中に忘れてしまったらしい。それがスゴ〜く体に合ったスーツだったらしく...。その後、調子を落としている。

現行のルールで行けば、来シーズンのコンチにも今シーズン程度の外国人選手の来札が予想され、また日本のWC組の参戦もあるだろう。ぜひ、たくさんの方に観戦に来てほしい。